介護実話 第5話 ーー介護現場における暴力行為の実態ーー
ここ数年、介護業界が注目されるようになってきて良い部分や良くない部分の情報が得られるようになりましたね。その中で介護士による暴行事件や暴力による死亡事件などもよく耳にするようになりました。こんな大々的なニュースになると、ご家族を預ける方にとっては不信に思う事もあると思います。
今回は、そのような事件から私の職場で過去にあった事や私自身が感じている事を記事にしていきます。
1.介護現場で実際に起きている事。
私が勤めてきた現場では、ニュースになっているような暴力による傷害や死傷事件は起きた事はありませんが、過去には暴力行為が発生してしまった事案がありました。
【ケース1 利用者様からの暴力行為】
職員(以下Bさん)がトイレにてリハビリパンツ(以下リハパン)の交換を行っている最中に、利用者様(以下Aさん)がBさんの顔面を殴り付け、職員の前歯が折れる事故がありました。
この件についての詳細は、当日Aさんは朝から機嫌が悪く食事を拒否されていました。数日に1回はこのような機嫌が悪い事があるため、その時は時間をおいて対応する方針となっていました。
ですが、この事故の1週間前に尿路感染を発症しており、陰部の清潔の指示もあったことからBさんは何度もトイレ誘導を行い、何度も拒否されていました。最終的にはズボンまでぐっしょり濡れた状態になっていた為、他の職員も協力し声掛けし何とかトイレ誘導する事ができました。
そのトイレ内でBさんがAさんのズボンとリハパンを脱がした後、BさんがAさんに「漏らしたのはお前のせいだ!」と腕を掴み叫びました。その後Bさんが「落ち着いてください。」と言った時に、顔面を拳で殴られ前歯が折れたという事です。
この件については、施設側からはご家族への状況の説明を行い医師と相談しお薬の変更が行われました。現場側は声掛けの仕方の注意と他職員と連携していくよう連絡がありました。
【ケース2 職員からの虐待行為】
職員(以下Cさん)が全介助が必要な利用者様(以下Dさん)を突き飛ばした所を他の職員が偶然発見し発覚した件です。
この件の詳細は、元々Cさん自体に日常から問題行為がありそれが常態化されている状態でした。具体的には、利用者様に対し「早くしろよ!」「遅ぇよ!」と言った暴言が日々確認できていました。
この状態に対して、他の職員からも苦情が出ており、上司への報告も行っていました。ですが、私がその現場に入って半年は何も変わらず改善されない状態が続いていました。
上司へ業務改善指導をお願いしていましたが、注意しているけど変わらないとの事だけで何も変わりませんでした。実際は話してはいませんでしたが、恐らく人材が足りず異動や解雇等に踏み切れなかったのではないかと私は考えていました。実際、Cさんは月に20~26日シフトに入っており、シフトの面ではかなり重宝されていました。
事件当日、CさんがDさんを突き飛ばした事が発覚し懲戒処分となりました。
被害にあったDさんは、全介助が必要な方で言葉も「あー」や「んー」でやり取りするためご本人の意思確認はほぼできない状態です。そのため、もし他の職員が偶然発見しなければ発覚することはなかったでしょう。
【ケース3 暴力をふるう利用者様への反撃行為】
職員(以下Fさん)が利用者様(以下Eさん)をトイレ誘導(手引きでの誘導)している時、Eさんに強めの平手打ちをされ、Fさんはその事に腹を立て平手打ちでEさんの顔を叩いてしまいました。
この件の詳細でしが、Eさんは職員と他の利用者様に日常的に暴力をふるう方でした。施設側の方針として、Eさんと他利用者様が近づかないように注意を払う事とされていました。
Eさんは歩行時にふらつく事がある為、移動の時は片手を支えて誘導する必要がありました。誘導する事自体に不満はなく、むしろEさん自身からのご要望でもあります。ですが、誘導の時少しでも歩く速さが早かったり遅かったりするだけも暴力をふるう事もあります。(毎回ではありませんが。)
当日、いつものように少しでも気に入らない事があると手が出ておりましたが、職員側は耐えつつ業務を行ったそうです。
ですが、この日はその他の利用者様の状態が悪く、救急搬送するかしないかのギリギリの状態であった為、職員側に余裕がなかったと当事者の方は仰ったそうです。
この件については虐待と認定されたとのことです。これについて施設側の再発防止対策は職員を増員し対応するという事でしたが、残念ながら増員できるほど人員もいない為、私が退職する時までワンオペ状態が続いていました。
2.現実と理想ついて私自身の見解
前段で述べたように、介護現場では暴力が発生しやすい現場なのだと感じます。私自身は暴力や暴言等の虐待にあたるような行為はした事はありませんが、それでも少しでもイラっとしたり、焦ってしまったりする事もあります。特に前段のケース3のように生命に関わる状態の利用者様がいらっしゃるときはかなり神経をすり減らします。加害者を擁護するわけではありませんが、そんな時に暴力をふるわれた時、今の私は理性を保っていられるという自信はないでしょう。
また、こういった事件を起きた際、施設側は「教育や指導を強化する」「増員し対応する」といった対策を述べますが、実際やっている現場にはまだ出会っていません。もちろん一生懸命取り組んでいる会社もあると思いますが、それには「人」と「お金」と「時間」が必要となってくるでしょう。それでもそこに投資した会社や現場はどんどん良くなっていくし、トラブルにも強くなっていくと私は感じています。残念ながら私が今まで勤めた現場はそこに投資する姿勢というのは現場からは見えてきませんでした。
ケース2で起きた事件のように、教育や指導ができていないがために虐待と疑われるような行為を日常的にする職員が増えてもおかしくないでしょう。
前のブログでも書きましたが、低賃金で教育されていない現場で良い介護を受けれるのって、職員自身の人柄や人生経験、仕事に向かう姿勢で決まってきてしまうのが現状なのかもしれません。(運ゲーなのか?)
3.まとめ
今回は介護現場で起きている暴力行為について、実際私が現場で見てきて感じた事を書いてみました。今回ご紹介した3つのケースの場合、法的には職員側が責められる事が多いでしょう。ですので私自身も同じような事が起きないように日々気を付けながら仕事に取り組んでいます。
私の場合、どうやって心を落ち着けているかというと、それは...
『仕事として割り切る』
これに尽きます。「いや普通でしょ」「あたりまえでしょ」と思うかもしれませんがこれを常に思っているかどうかって結構大事なんです。突然何かが起きた時に常にこういう考えを持っていると不思議と落ち着けて対応できたりします。
仕事って大変な事が多いですよね。良かったら皆さんも辛い時こう思ってみてはいかがですか?少しでも気が楽になれば幸いです。
それでは今日もお仕事お疲れ様です。