ちょこ。ころんの介護備忘録

介護士の出来事を記録しています。

介護実話 第2話 ーー介護現場での教育の実態ーー

 これは私が今まで数か所の現場で体験した介護現場での教育の実態を記録として残しておきたいと思います。

 これから介護の現場に入られる方やご家族を施設へ預けていらしゃる方で実際の現場の実態を少しでも知りたいという方への一つの情報となれば幸いです。

 

1.現場で教わる事。

 会社や施設によって、当然ながら思想が違うため一概には言えませんが、現場で教わる事のほとんどはその日の利用者様をただひたすらに対応していくという事です。

 

 多くの現場では、職場に入ったその日から先輩職員に付いて、その日いらっしゃる利用者様の対応を見て覚えたり、やってみたりもします。

 

 実際に対応する具体的な留意事項には以下のようなものがあります。

  • 食事について・・・介助が必要か・水分にトロミ付けは必要か・見守りは必要か・食事時のベッドや車いすの角度など
  • 移動時について・・・付き添いは必要か・杖や歩行器は使っているか・移動に支障のない視力を持っているか・怪我や痛みを抱えていないかなど
  • 移乗時について・・・麻痺があるか・立位は自身で保てるか・掴まることはできるか・座位は保てるかなど
  • 排泄について・・・便秘の状態はどうか・尿量は多いか少ないか・尿路感染等の症状があるか・陰部洗浄が必須かどうか・介助が必要な方の場合コールを押してくれるかどうかなど
  • 睡眠について・・・夜間に不安が強いかどうか・昼夜逆転かどうか・眠剤や安定剤等があるかどうかなど

 上記のような内容を各利用者様毎に確認しながら対応していくという事をやっていきます。

 

 ただ利用者様自身、日々状態が変わられたりすることもありますし、利用者様が変更されることもある為、この利用者様だからこの対応といった決まった内容があるわけではありません。逆にそのように決めつけをしてしまう事の方が危険です。

 

 例えば、今まで歩行については見守りだった方が、ある日からお薬が変更になり歩行不安になった事を認識せず、「この方はいつも通り見守りでいい」と思っていたら転倒事故になってしまったといった事例もあります。

 

 いつもとの違いを大事にする事が重要なのですが、新人はまずその「いつも」が分からないのでこれを自身で覚えていく必要があります。結構これが事故を未然に防いだり病気に気づいたりするために大事なスキルだと私は思っています。

2.現場の実態。

 次に実際の現場での教育について、リアルな現状を見ていきましょう。

 

 まず、未経験者の場合、初日は基本的に先輩職員に付いていき先輩の仕事を見て覚える事が多いです。

 そして2日目から自分自身で仕事をして先輩に見てもらい、アドバイスをもらうという事が多いです。

 

 多くの現場では上記の流れが多いですが、稀に経験者の場合は最初から全部やらせる現場もあります。先輩職員さんはやる気がないか教え方が分からないかは分かりませんが、困った時だけ呼んでくださいといったような現場もありました。

 

 この場合、自分から聞きに行けるような人であればいいのかもしれませんが、なかなかそういう方って多くはないんじゃないでしょうか?

 私自身は聞きに行ける方ですが、それでも現場で目が離せない時はやはり呼びに行く暇が無かったりもします。そういう時は困りましたね。私の場合はその場は自分で何とか無事に対応してから事後報告をするという形になりました。

 

 この事後報告の時にアドバイスではなく、小言や文句を言われるような事もありました。なのでもし教育される際に放置されそうであったら遠慮なく「新人なので一緒に見てください」と言いましょう。

 

 この問題は教える人が教え方を知らないだけなのではないでしょうか?どこの現場の先輩職員もそうでしたがみんな

「私はこうしている」

「ほかの人はどうやってるか知らない」

と同じことを言います。

また利用者様からも

「あの人はやってくれない」

「いつもこうしてくれてるのに」

といったご意見も頂戴します。

これは標準が無い証拠だと感じてしまいます。もし標準的で正しいやり方があるとしたら、

「正しいやり方はこうです」

「標準的なやり方はこうするけど、この利用者様の場合はもう少しこうします。なぜなら・・・」

という教え方になると思います。

でも誰もこういう言い方はしないのです。

 ある時、直接先輩職員さんに話を聞いてみると、

「どれが正しいか分からないから困っている」

と言っていました。みなさん上司から唐突に新人がくるから仕事を教えてくれって言われただけで、教育に必要な資料も何もないそうです。

 

 介護の現場では介護記録を付ける現場がほとんどです。記録の付け方は現場それぞれですが、内容は利用者様の様子や食事、水分、排泄、睡眠について書くことが多いです。この「書き方」について先輩に聞くと、皆さんスラスラと教えてくれますが、この記録はこの後どう活用されてその後どういう扱いになるのかを聞いてもあまり答えられない先輩職員がほとんどです。 

 先輩職員の方も教育されていないんだなぁと感じてしまいます。

 

 もっと酷いケースでは、新人に全てやらせて、終わり際に

「どう?できそう?」

と言われ

「はい(なんとか・・・)」

といういうと何も確認せずに独り立ちとなります。

 ※独り立ち・・・職員一人で対応する事(俗にいうワンオペ)

 私は利用者様に安心して過ごして頂くよう自分なりに考えて工夫していますが、それでも事故が起きてしまったり、不安にさせるような失敗もあります。

 他には仕事を全くしない職員もいます。この場合は最悪です。事故が起きても放置したり、隠したりは当たり前にあります。でも証拠はないので何もできない事が多いのが事実です。

3.教育に力を。

 介護業界だけの問題ではありませんが、最近の企業や社会自体が教育にあまり力(人&お金&時間)を入れていない、または力を入れられないのではないでしょうか?

 

 私自身、介護業界やその他業界に副業もしながら色々経験をさせて頂いておりますが、そこで感じることは何も教育せずに現場で働かせるという現場が散見されています。

 むしろ教育ではなく、作業訓練だと言っていいでしょう。おむつの替えを取ってきて使用済みのおむつを外して付け替えるとった事だけが教育とされている事に疑問を感じてしまいます。

 これでは、利用者様をまるで物として扱うような内容に聞こえてなりません。だから扱いが雑でもごまかしても許されてしまうのかなぁと感じてしまいます。

 

 そういった作業的な部分ではなく、人を扱う、ましてや怪我や病気を抱えていらっしゃる利用者様を扱う為のケアの方法やホスピタリティについての心構えを重点的に時間と人とお金をかけた教育が必要だと感じます。

 

 現場では教育に力を入れていない為、負のスパイラルに陥っているように感じていまっす。

  • 教育に力を入れない
  • 人が育たない
  • サービスが低下する
  • 人のせいにする、もしくわサービスを向上させる為の業務が増える
  • 人が辞めていく
  • 人が足りない
  • 新人が入る
  • そして教育はそのまま力を入れず

 

 この繰り返しをしている現場を多く見かけます。

 

 教育自体もただダラダラと時間を掛けてやればいいというのではなく、目的と目標を決めて行う事が大事です。知識や技能も大事ですが、心構えやリスクヘッジなども項目として入れても良いかもしれません。そしてきちんとそれをマネジメントし現場の皆で周知できる環境にする事が大事です。

 もちろん教育には、時間も人もお金も使います。でもそれなくして教育なんてできないですよね。ケチる部分は他にあっても教育ではないと考えます。人があって成り立つ現場なら尚更です。

 だからこそ私は今の現場には教育は最も重要な課題だと感じています。

 

4.まとめ

 今回は介護現場の教育の実態を私自身が経験した事でまとめてみました。皆さんも話だけ聞いたことあったり、想像で思っていた事もあったと思いますが、いかがだったでしょうか?「そうだったんだぁ」と思われる方もいれば、「まぁそんなもんだよね」と思う方もいると思います。それでもこれらは紛れもない事実と私の感想でもあります。

 実際私自身、教育がなされず困ったり悩んだりした事もあります。改善提案をしてみたりもしましたが、なかなか受け入れて頂けない事もありました。それだけが理由ではないですが、施設や会社を転々とする結果となっています。

 転職が最良という事はありませんが、一つの会社で何かを成し遂げるという事も素敵な事です。会社や現場の仕組みはそう簡単に変えられないのかもしれません。ですので気長に気楽にやっていきましょう。