介護実話 第4話 ーー介護施設で感じるサービスの差ーー
介護施設では良いサービスを受けている人と通常のサービスを受けている方に分かれる時があります。
これは差別やひいきのように感じられ、悪い印象のように思われる事も多いでしょう。
ここではあくまで職員自身のサービス精神をより感じられるかそうではないかという事をテーマとしています。差別やひいきを受けているからきちんとしたサービスを受けられていないということではありません。
では実際に現場で起きているサービスの差の実態をご紹介します。
1.サービスの差が生まれる理由
まず最初に良いサービスを受けられるという事は、基本的に職員から人間として好かれていたり、人気がある場合が多いです。逆に通常のサービスのみ、悪く言えば最低限のサービスのみを受けている方というのは、残念ながら職員から好まれていなかったり、敬遠されていたり、煙たがられていたりなど職員からの人気がない方といえるでしょう。
もちろん職員によって人間性の好き嫌いの差はあると思いますが、ここでは大多数の職員からの人気・不人気に着眼して見ていきたいと思います。
まず職員からの人気が高い性格ですが、穏やかな方、気さくな方、聞き上手な方など人とのコミュニケーション能力がある方が挙げられます。これは無理してやっている事ではなく、自然にできる方、できている方という事になります。この自然にできるというのが重要で、介護施設では24時間、利用される方や施設によっては長期間利用する事が多いでしょう。そうなるとちょっと取り繕った程度はすぐにホンネや本性が見えてきます。ですのでこの「自然に」というのが重要となってきます。
逆に不人気の性格は、暴言や暴力がある方、何に対しても文句を言われる方、脅しのようなクレームを言われる方、威張り散らす方といった誰でも嫌がるような行為をされる場合や、これは私が最近気づいた特徴ですが、職員に対してなんにでも「ごめんなさい」や「すみません」といった謝罪を言われる方です。これは意外かもしれませんが、介護する側としてサービス行った事に対して謝罪をされるというのはあまり良い気はしないのではないでしょうか。人気が高い方は、小さな事でも「ありがとう」という感謝の言葉や気持ちを表す事が多いと感じます。
次に人生の経歴から見ていきます。経歴は皆さん違う為、ここは自信をもってこれが良い悪いという断言はできませんが、私なりに今現在で気が付いた事を述べていきます。
「結婚」、「子育て」、「社会人経験」これらの経験ある方は人気が高い方が多いように感じられます。逆に「独身(身よりがいない)」、「生涯専業主婦」、「地主や社長」の場合、癖が強かったり、傲慢だったりなどして職員から嫌われる場合が多いように感じられます。このケースに当てはまってもその人自身の人柄で好かれている人もいるため「絶対」ではありません。
このことについて私自身の見解ですが、介護施設の職員は皆さん社会人です。社会で仕事をするという事は、嫌だなと思う事もするし、嫌いな同僚や上司とも関わる必要があります。したくなくてもコミュニケーションを求められるでしょう。人気が高い方は「結婚」「子育て」「社会人経験」とコミュニケーションを求めらる人生を歩んできた為、私たちと価値観が近いため、人気が出るのではないでしょうか?
不人気の方は、大多数の職員と価値観が合う場面が少なく、嫌な思いをする場面が多いため、嫌われてしまうのかもしれません。例としてとある人の言葉を振り返ってみると...
Aさん「あの人(Bさん)ずっと同じ話しててうるさい!」
職員「ここはみんなでお話していい場所なので良いんですよ。きっと思い出深いお話なんですよ。」
Aさん「あんな話聞いてるとこっちの頭がおかしくなるよ!」
...しばらくして
Aさん「うるさいな!ここでそんな話するな!」
Aさん「私の方がここ(施設)に長くいるんだからな!」
...別の日
Aさん「早くあの人(Bさん)を帰らせろ!」
Aさん「あんたたちも大変だね。あんなの相手にするの疲れるだろ。」
こういった自己中心的な発言を言う方は職員からも良くは思われていませんでした。ここでのAさんは生涯独身で身よりがいない方でした。ちなみにここでのBさんはすごいお話好きで認知症の影響もあり同じ話をする事が多いですが、人柄も良く人当たりが良い方で職員からはそこそこ人気がある方でした。
ここで言える事は、仕事ではありますが職員も人間です。どうしても好き嫌いやひいきというのは無意識でも生まれてしまうのでしょう。
2.良いサービスの内容とは?
次に良いサービスを受けられている方は、どういうサービスがあるのかを見ていきます。
前段でも書きましたが不人気や嫌われているからと言って特別な事由が無い限り通常の介護サービスが受けられないという事はありません。これは職員側が業務自体を放棄したり、利用者様が強く拒否をしない限りサービスをしないという事はないでしょう。※意図的に業務を放棄した場合には、処罰があります。
では通常の介護サービス以外のサービス(=良いサービス)って何があるのでしょうか?
業務に入る時、利用者様とあいさつを交わす現場が多いのですが、そのあいさつから見てみると、相手の目線に合わせて笑顔で挨拶をし、少しの会話を行う事が多いです。ここの会話でその日の状態やしたいことや思っている事を聞けるときがあります。ここで聞けた事が実際のサービスへ繋がっていきます。
次に食事の時で見てみると、いつも完食する方がほとんど残した時にも、調子を教えてくれたり、食事が硬くて食べられなかった事などを教えてくれます。これも実際のサービスで繋がっていきます。実例を挙げると...
職員「今日ほとんど召し上がってませんがどうしました?」
Cさん「実は夕方から入れ歯の部分が痛くて硬いものが噛めなくて」
翌日、歯医者へ行ったことで状態が良くなっていきました。
こういった会話ができ実際に痛みや状態が悪くなる前に対応が可能になります。
サービスの差は利用者様との良好なコミュニケーションがとれ良い信頼関係が築けている場合に現れてくるのだと思います。
3.まとめ
今回は介護施設で感じるサービスの差について、私が現場で感じた事を記事にしました。実際利用された方はどう思われているかは分かりませんが、職員側から見るとこういう側面が見て取れます。
この記事を読んで「ひいきだ!」「差別だ!」「不平等だ!」と思われるかもしれませんが、これは介護を行う側が人間である限りある程度は変わらないものだと思っています。
皆さんも日常でこういった経験ないでしょうか?例えばお店のレジでイケメンや美人には丁寧に接客しているように見えた経験や、あなたが車に乗っていて横断歩道じゃない場所で人が道を渡ろうと待っている時、小さな子供やお年寄りの時は高確率で道を譲ったりした経験ありませんか?
これも言ってみれば「ひいき」や「差別」なのではないでしょうか?
我々のサービス業でも言葉や対応は同じでも、人によって無意識に表情が違ったりしているのかもしれません。その延長線上で今回の記事のような事が起こっているのではないでしょうか?